森のすず社会福祉士事務所です。
メイン業務は、成年後見の受任や相談です。
先日、成年後見関連の話題になった時、質問されました。
『認知症になったら、銀行口座は凍結されるの?』
あまりに唐突に聞かれたので、『え?いや、即座にそんなことはないけど』と答えつつ
なぜそういう理解になっているんだろう?という疑問が・・・
よくよく聞いてみると、広告か何かに書いてあるのを見たのだとか。
確かに、ネットを検索してみると、それらしい説明がされているサイトが出てきます。
でも、その20文字程度の質問は、かなり大雑把な質問の仕方です。
まず、『認知症になる』ですが、これはどの時点でのことを言っているのでしょう?
認知症になる=診断される、ということであれば、認知症の症状がごく初期段階にあって診断される人もいますし、ずいぶんと進んだ状態でも結局診断されることなく来ている人もいるでしょう。
それはどういうことかと言うと、もう最近ではかなり啓発されていることですが、『認知症は即座に物事がわからなくなったり、出来なくなったりする病気ではない』ということなのですが、まったくその考えもなにもない。
ゼロか百か、白か黒かで、考えることは、認知症の理解や支援においては、何のメリットもありません。
どの時点から認知症か、というと、いろいろと診断基準はあるのでしょうが、それですら受診時が早いか遅いかで大きく違っています。
インフルエンザみたいに、高熱がでるとか、身体の節々が痛いとか、分かりやすい基準は基本的にはありませんから。
つまり、仮に認知症だと診断されていても、即座に金銭管理が全くできなくなるほどの状態であるとは限りません。
初期の場合、いろんな管理や生活のなかの動作は自分でできるものが多いです。
とはいえ、金融機関も認知症が疑われる人の財産を守ることには、近年協力的だという話も聞きます。
ですので、状況によっては、多額のお金を引き出すことが不自然で、理にかなった説明ができない場合には、金融機関でもピンときて、警察や支援の窓口と連携する場合もあるようです。
お金は生活を左右する、大切なものです。
もちろん、口座からお金が引き出せなくなってしまうのは、それはとても困るのですが、一方で、何かに騙されて大金を失ったり、記憶が保てずに何度もお金を引き出しては紛失したり盗られたり・・・ということになってしまっても、困ります。
出せないのは、困る。
でも、あるけど出せないのか、なくて出せないのかは、ずいぶんと違います。
もし、認知症になっているかもしれない、と思う場合は、まずは早く受診をしましょう。
行先は、心療内科や精神科、物忘れ外来や、認知症サポート医のいる病院やクリニックです。
そこで、認知症なのか、違う病気なのかをみてもらうことは大切です。
そのうえで、認知症だとわかったら、早期であればまだまだ、未来の自分に対してできることがあります。
それは、例えば財産管理の手段を考えたりすることです。
自分がどう生きていきたいのかを、考え、備えることです。
認知症を恐れ、その社会的な影響を恐れることは、人生のなかでたくさんのものを恐れ、回避する手法を考え、ずっと追われるような生活になるでしょう。
しかし、その恐れは、なかなか取れません。
でも、もし、備えることができるなら、それは大きな安心です。
備えましょう。
恐れていないで、備えましょう。
そうすれば、まだまだ、楽しい時間を過ごすことができるはずです。
さぁ、続けてやっていきましょう。