兵庫県明石市では75歳以上の方を対象に、認知症の診断費用を最大7000円助成。チェックシートの提出で図書券500円がもらえる制度もスタート。神戸市では認知機能の検診と精密検査に関する助成制度を来年1月から開始予定。これは全国初の検診と精密検査を組み合わせた診断助成と事故救済制度。ほかの地域でも早期受診を促す取り組みはなされているが、なぜ早期発見が大切なのでしょうか。考えてみました。
こんにちは。森のすず社会福祉士事務所 森保です。
9月は認知症啓発月間でした。各地でオレンジ色にライトアップされた建物や、啓発イベントなどでにぎわっていました。
さて、9月が過ぎても、認知症について知って理解していただき、あなた自身とあなたの身の回りの人に必要なら必要な支援を届けたい!と、思います。
この夏から秋にかけて、認知症の早期発見や認知症になっても安心して暮らせる街づくりのための取り組みがいくつか報道されました。
一方、
「早期発見っていっても、治す方法ないんやろ?だったら、早くに知っても意味ないやん」
「受診とか、いざしようかとおもっても、どこにいったらいいかわからへんし」
「受診して、認知症やっていわれたら困るし・・・」
そんな話を聞くことがあります。
果たして、認知症の早期発見は誰のために、何のために必要なのでしょうか?大切なのでしょうか?そんなことを、考えてみました。
早期発見のための取り組み
「認知症は早期発見が大切、早期発見のために早期受診を!!」というのは、たいてい認知症の啓発活動の場では言われていると思います。
受診につなげるために、各市町には『認知症初期集中支援チーム』が設立され、地域包括支援センターや保健センターと、地域の医師、看護師、薬剤師や作業療法士などの専門職らが支援できる体制が整えています。
各地に認知症疾患医療センターが設置され、またその数も徐々に増えてきています。
地域のお医者さんも、精神科や脳神経外科や脳神経内科などの先生ではなくても、認知症について相談できる、いろんな科のクリニックも増えています。
気軽に主治医に相談できるのは患者さんにとっては心強く、また、長年患者さんをみてきた主治医だからこそ、その様子の変化がわかるのは、患者さんにとってもメリットです。
また、自分や家族で確認できる「チェックシート」をつくっている自治体も多いと思います。
チェックシートをお渡しすると、多くの方がその場で開き、目で見ておおよそこたえられるかどうかを試されます。
「あー、これは大丈夫やな。」「うーん、これはたまにあるかな」そんなことをお友達と笑いあってされていることもよく見る光景。
とはいえ、やはり、正式に受診となると、敷居が高い。
あらたまって、『先生、私、認知症かもしれないとおもうんです!』というのを考えると、うーん、ちょっとなぁ・・・・と思う部分もあったりします。
『だって、治らないんでしょ』について①
その一つの要因は、受診して、認知症だと診断されたらどうなるのか?という不安の存在。
「だって、認知症は治らないんでしょ。どんどん進むんでしょ。いろいろ忘れるんでしょ。どうせなおらないんだったら、診断されても不安になるだけじゃないの?」という声も聴くことが少なくないです。
現代の医学で認知症が治るか治らないかというと、「アルツハイマー型認知症等は、治りません」でしょうし、「認知症だと思っている症状が、正常圧水頭症やビタミン欠乏など治療できる原因が由来で起きているのなら、それを早期に治療すれば認知機能は戻る可能性があります」という話。
まず、「認知症は治らない」という認識は、たしかに大部分は今の医学でもそうなのかもしれませんが、『では、その症状は、治らないタイプの認知症のものなのか??』という大前提の部分で疑問がありますし、その部分はきちんと受診を受けないとわかりません。
よく転倒をするようになり、トイレも間に合わなく、少し様子も変わってきたおじいちゃんが、認知症になったんだとおもっていたら、硬膜下出血があり、治療したら元に戻った、という経験談を聞くと、素人の勝手診断で放置するのは良くないなぁとつくづく思います。
つまり、『治らないから、診断受けない』というまえに、まずは、それが本当に治らないタイプの認知症なのか、どんな病気なのかを確認するために、受診は大切です。
『だって、治らないんでしょ』について②
では、受診したとして、治らないタイプの認知症だったとしましょう。
こうなったときに、なすすべはないのか?というと、そんなことはありません。
認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が4大認知症として知られていますが、ほかにもいろいろ。
認知症の症状をもたらす原因となる病気は、100、200以上あるともいわれています。
やるべきことは、今の生活が快適に継続できるように、安全に継続できるように、備えていくことです。
自分自身や家族や周囲の人が、病気に対して理解をすることも大切でしょう。
特別な、たいそうなことを考える必要はなく、病気がもたらすことを知っているだけでも、心強いものです。
介護保険の使い方について、把握し、相談をしておきましょう。
まだ早いかな、と思っていても、専門家の助言には助けになるヒントがあるもの。
地域包括支援センターに、「かくかくしかじかなんだけど、介護保険ってどうしたらつかえるの?どういうことにつかえるの?」と気がるに聞いてみましょう。
必要な支援を適切なタイミングで使うことは、安全に安心できる生活を継続するために大切なことです。
早期の診断は、どんな支援が必要になるのか、今のことや将来のことを含めて考えやすくなるものです。
認知症の支援では、薬物での治療よりも、環境を整え、周囲の人の対応や、支援の利用をうまくすることをまず挙げられる場合もあります。
受診は医療機関で行いますが、そこからの医療的な治療とともに、福祉的な支援、家族や仲間の中でのお互いの支えあいについて考えるきっかけづくりにも、早期受診は大切です。
つまり、早期受診だけでなく、そのあとには、早期介入(支援を行うこと)がついてくるものなのです。
早期受診のススメ、はじめの一歩はまず相談
受診したいと思った場合、どこに受診していいかわからないという話も聞きます。
高齢者の相談窓口は、お住まいの地域の地域包括支援センターです。
どこにあるかわからない場合は、お住まいの地域の市役所等にご確認ください。
地域包括支援センターでは、保健師や看護師、介護主任専門員、社会福祉士の3職種とともに、最近では認知症支援を行うスタッフを配置している場所も増えました。
高齢者の生活全般についての相談を行うことができる窓口です。
継続してかかっているなじみのホームドクターがいらっしゃる場合には、その先生に相談してみましょう。
診断の検査をきちんと受けたい旨をお話されると、主治医から地域の認知症疾患医療センターへの紹介を行ってくださるかと思います。
もちろん、今はまだそこまでの検査は別に・・・とおもうものの、ちょっと心配・・・、という時でも、主治医の先生に相談してみましょう。
まずは専門家に相談!そして、早期受診!!
認知症の相談窓口は、地域包括支援センターや、病院・クリニック、薬局などで行えます。
また、行政が行っている電話相談窓口、認知症の人と家族の会の電話相談窓口などもありますよ。
病気のことは悩んでいないで、見ぬふりしないで、相談、受診。
それは、認知症に限らず、どんな病気の予兆でも大切だと思います。