読書8:『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』

今年は読書&記録をやっていきたいと思います。森のすず社会福祉士事務所 森保です♪
2019年の感想文8冊目は→ 『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』 佐藤眞一(著)


『認知症の人』というと、ざっくりし過ぎな気がする。とはいえ、細かな一人ひとりの個人差をタイトルや名称に列挙するわけにもいかないから、結果としては『認知症の人』に落ち着くのだと思うけれど、しかし、『認知症の人』の状態は本当にさまざまで、一概には言えない、ということは、高齢者福祉に関わる人は頭の片隅にとどめておかなくてはならないことだと思う。

この本の中では、主にコミュニケーションについて触れられている。1章では『会話』に着目した展開で、なかでも「CANDy」という評価スケールについて詳しく説明されている。会話というのはコミュニケーションをとる際に大切なものであり、その状態はコミュニケーションや社会生活に影響を及ぼすものである。現在、認知症のスクリーニングはMMSEや長谷川式スケールによるところは大きいが、それらではカットオフ値にひっかからないが、しかし一方で生活面や対人関係面では困難がある状態の人について、気づくことができそうなツールである。

第2章では、認知症の人のコミュニケーションの特徴が述べられていて、非言語や社会的認知について述べられている。そもそも、私たちの会話は、「過去の記憶がある」という部分は意識せずに大前提となっており、その部分があいまいとなった人と会話を行おうとすると、日ごろのようにすんなりはいかない。過去の記憶があることを税艇とした意思疎通を行うと、そのコミュニケーションの中で、不審なこと、不安なことが起ってしまうようになる。もちろん、認知症になり低下する認知機能は記憶力だけではなく、認識すること、理解することなどに及ぶ場合もめずらしくなく、それらは周辺の理解や、他者との関係の保ち方にも影響がでる。それらについて事例を交えてのべてある。

3章以降も、認知症の人が見ている世界、苦しみ、ともに暮らす方法などが書いてある。心の中というタイトルだが、心は認知機能に支えられ、またコミュニケーションも認知機能により影響され、それらは社会生活に対し影響をもち、また社会の本人との関係性は本人の心にも影響するものであり、心だけでなく、幅広い視点から認知症の人の支援について述べられ、虐待防止についても書かれていることは、私にとってとても参考になる本だった。

内容は、認知症の入門書とするには難しいかもしれない。専門職が読むには適度に読みやすいのではないかと思う。

結局、認知症というものは、何なんだろうか?記憶を失っていくこと、物事の理解力が低下すること、自分を抑えることができにくくなること・・・その症状はさまざまで、生活に影響が出る部分も、病気が進行するにしたがって増えて来る。しかし、喜怒哀楽は存在し、快不快も存在する。たとえ表現できなくても、そこに人がいる限り、人にとっての快不快や喜びや悲しみや怒りは、存在すると私は思う。人の心の中を想像することは、その人の過去の生活を知り、好みや望みを知りながら、想像していきたいと思う。ただ、基本的なこととして、やはり今の時代に「認知症になる」ということは、治療方法がなく、いろんなことができなくなっていくという未来に対しての不安感がとても大きなものである。そして、日ごろの、これまでとは違う、「あれ?」と思うことが自身におこっていく状態は、何とも言えない気持ちになるだろうとおもう。支援者として、できるかぎり、安全や安心が保障されるべき場において、不安感をもたらさないように、心の中のしくみや、認知機能の状態を学び知っておくことは大切である。

「認知症だから」という6文字で理由となるものではない。認知症の症状をもたらす病気はたくさんある。想像をこえて、たくさんある。だから、その人の状態はそれぞれ違い、原因となる病気によって状態は変化し、個人差もあるのだろう。生活面のアセスメントが大切だと、つくづく思う。

認知症の人の心の中はどうなっているのか?

(光文社新書)  佐藤眞一 (著)

  • 新書: 292ページ
  • 出版社: 光文社 (2018/12/12)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 4334043879
  • ISBN-13: 978-4334043872
  • 発売日: 2018/12/12