日: 2019年4月28日

【10連休企画10連ブログ②】防災と福祉のはなし

こんにちは。森のすず社会福祉士事務所 森保純子です。

10連休の方も、お仕事が入っている方も、それぞれだと思います。私は「お仕事が入っている」方です。しかし、仕事をするにしても「世間が長期に休み」というのは、なかなか日常とは離れた雰囲気です。金融機関、役所が開いていないというのは、いろんな手続きができないので、やっぱり不便。

とはいえ、この機会、ブログ10連続に挑戦しています。今まで書いてきたことや考えてきたことを、振り返りながら。

2回目の今回は『防災と福祉のはなし』

前年度の終わりに新聞やWebニュースにも掲載されていたのですが、兵庫県では福祉と防災の連携促進事業として、県内の市町にて、災害時要援護者(要配慮者)の個別支援計画(個別ケアプラン)を作って、みんなで避難訓練をする、という取り組みをしています。昨年度は県内のモデル地域2カ所で実施していましたが、今年はあちこちで行うこの事業に、私も兵庫県社会福祉士会の災害支援委員会として参加させていただいています。

避難訓練というと、私の中で思いつくイメージが、まずは学校で行われた避難訓練。非常ベルがなり、みんなで上靴のまま校庭に逃げる、というようなものです。そして、次に思いつくのは、障害者支援施設で働いていた時に、夜間を想定した避難訓練を行ったことです。夜勤中に火災がおこったという想定で、担当になった職員が全員を誘導し避難する訓練を行いました。もう一つ思いつくのは、職場でおこなった避難訓練です。みんなでゾロゾロと集合場所に行きました。「もうちょっと本気でにげてください」と集合した場所で防災担当か消防局の方かに言われた気がします。

いずれにしても、いざという時に本当にこれで役立つんだろうか??と不安な部分はありますが、その不安は訓練が終わると消えていました。心のどこかには「でも、たぶん、大丈夫。」という、根拠のない考えもありました。

さて。

ところで、これまでも全国で災害がおこり、避難所が開設されることは度々ありました。福祉避難所というものも設置されたことと思います。福祉避難所は、各市町で運営は多少違うかもしれませんが、何らかの福祉的なニーズがあり、一般の避難所では避難生活の継続が難しい方に、ケアしやすい環境を整えるために設置される避難所です。設置基準や場所は、計画によって定められているはずです。

ところで、福祉避難所はあるものの、そもそも避難時に何らかのサポートが必要な方の避難方法については、あまり具体的にかんがえられてはきていませんでした。とはいえ、冷静に考えると、福祉避難所ができるくらいなので、避難しそれを利用する人がいるわけです。ケアのニーズはさまざまですが、想像すると、例えば寝たきりの状態の方、車椅子や杖を使っている方、災害が起こっていることや身を守る判断ができにくい方、視覚障害や聴覚障害のある方など、生活のなかでも、もちろん、災害時の行動の中でもサポートを必要とされる方は大勢いらっしゃるはずです。しかし、どうやって避難しているのかを考えたことは、私は最近までありませんでした。避難してからのことは、多少考えることがあっても。

平成25年の災害対策基本法の改定では、各市町に住民の災害時の避難に支援が必要な方の名簿を作成することが義務付けられました。しかし、その名簿も、かなりの市町で作成されているものの、実際に災害発生時にその名簿に掲載されている人を支援して避難することができるか、というと、なかなか難しいようです。名簿には、いくらかの情報は掲載されていますが、それをもとに、いざという時に助けましょう、と言われても名簿を渡された自治会長さんや民生委員さんは、どうしていいかわからないでしょう。中には、助ける担当1名に対し、大勢の支援が必要とされる方が記載されている場合があるとも聞きます。名簿はつくられているものの、それが実際に機能するものかどうか、どうやって使えばいいのかは、また別の取り組みが必要だ、ということです。

別府市では、2016年から「インクルーシブ防災」事業がすすめられています。ここでは、まず、防災を担当する行政と福祉を担当する行政が連結して動けるような仕組みをつくり、地域住民や福祉の専門職らとともに、防災の活動をすすめているとのことです。

福祉と防災担当の行政が連動できることで、例えば、縦割りで動くと「名簿は防災担当が、普段の福祉は福祉担当が。普段のことを防災担当は知らないし、名簿のことを福祉担当は関与してないよ」ということがおこりますが、それがなくなります。そのうえで、地域住民をサポートして、みんなで逃げる避難訓練を行い、それを行うことによって、事前準備や理解を深められると、みんなにとって住みやすい気になる、ということにつながります。どんどん、良い繋がりができます。

その考え方には、なるほどな、と思いました。

私にとってはとても幸いなことに、この別府市のモデルを研究されている同志社大学の立木茂雄先生が兵庫県での取り組みも助言されているので、先生のお話を繰り返して何度も伺う機会を持つことができました。

災害時個別ケアプランを作成するための研修も受けることができ、アセスメントする方法も身につけることができました。事前準備の大切さと、必要な事前準備を確認する方法もわかりました。これらは、大切なことだと思います。

正直なところ、発災後の支援については関心があったものの、「備え」の部分にまで考えが至ることはなく、なんとなく言われると必要だろうなぁという程度の理解でした。しかし、学び、話を伺い、取り組みの様子を伺い、経験するなかで、備えを行う取り組みはとても重要であるし、大切なものだと考え、感じられるようになりました。

高齢の方と災害の話になり避難の話になると「もう、ええよ。そのときは、あきらめとるからな。ここで死ぬわ」という会話になることは、良くある話だと思います。逃げにくいのは高齢者だけではなく、身体障害者、知的・発達障害者、妊婦や幼児を連れた人、子ども、日本語が理解しにくい人、たまたまケガをしていたり病気で寝込んでいる人、など。その人たちも「あきらめるしか、しかたない」という仕組みになってしまう可能性は高いです。でも、実際は、あきらめきれない、です。今の時点であきらめることは、できないです。

準備をすれば、助かる命はある。失われずにすむ命はある。

それは、私が防災と福祉について考えるたびに確認することです。

昨年の災害でも、ほんのわずかに、環境をちょっとちがったように整えていたら、地域とつながっていて、声をかけられる状況であれば、助かった命があったと、報道されています。その1例だけでなく、おそらく、日本全国では似たようなことがのでしょう。

障害者や高齢者と一緒に避難する取り組みは、日本のいくつかの街で行われているようです。

こういう取り組みが広がり、逃げるのに支援を必要とする方が、適切なサポートを得られる状況が広まり、何かがあってもお互いに支えあえる社会が発展すると良いなと思います。

私も、もっともっと経験と勉強を重ね、地域社会の安心安全に貢献できるように、歩んでいきたいと思います。