読書:AI vs. 教科書が読めない子どもたち

今年は読書&記録をやっていきたいと思います。森のすず社会福祉士事務所 森保です♪
2019年の3冊目は→ 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子(著)


私は、一応、情報科学を学んでいました。それは10年以上前なので、AIは今のような形ではなく、本書の中でも説明されている「エキスパートシステム」の全盛期でしたが、そのころでも将来の仕事の大部分は、コンピュータにとってかわられるというようなイメージがあったように思います。

ついでに、私は、一応、発達障害の子どもの読み書きの支援を通じて、人が文字や言葉を覚え理解することについても学びました。文字を覚えること、言葉を理解すること、そして文章を理解することは、とても複雑な脳の処理によってなされていることを体感しました。また、文字や言葉を駆使して文章を作り、それを自分の伝えたいことや思いを形にするということも、とても難しいことだということも感じました。

福祉の世界では、「意思決定」や「意思表示」の支援を行うことがありますが、物事を理解し意思を決定し表示することが、いかに難しいことかと思うのは、10年以上前の大学院生活の間に経験したことによります。

そして、例えば最近では、高齢者を介護するためのケアプランはAI化されようとしていたり、介護の現場にもロボットの導入で、いかにも介護がロボットによって、より豊かになり、人間にかかる介護の苦労が減るような印象が持たれているようです。でも、そんなにうまくいかないのではないかと思います。もし、鉄腕アトムのように人と同等の心を持つ、人間型のロボットができれば、すべてを人間の代わりにできるようになるのかもしれません。でも、心の在り方をロボットで再現することは、きっと難しいだろうな・・・と。

 

そんな思いを常日頃から持っていたのですが、何となく本屋さんで手に取ったこの本。発売されたのは1年ほど前ですし、発売されたころから並んでいるのは見ていましたが、手に取るまでにはいきませんでした。

でも、この年始。本屋さんに行き、気ままにまとめ買いをした12冊のうちの本が、この本でした。

余談ですが、読書って、タイミングがありません?ありますよね。きっと、何かがささやくのです。本屋さんで。「あなたに今必要なのは、この本です!」と。そして持って帰り、積読になるのか、すぐに読むのかも、何かがささやくのです。「もう少しまちなさい」または「いまから読みなさい」と。

読んでみた感想は、なるほどなぁと、そうだよねぇ、です。

前半は東大を目指すロボットとITやAIの話、シンギュラリティは来ない、などの話。

後半で、子どもの読解力のテストをしたという話。これは全く知らなかった取り組みなので、すごくおもしろかったです。

 

前半のこれまでのAIの開発の歴史は、ここ10年ほどの動きをダイジェストに掴めたことは、面白いことでした。ロボットが大学入試に挑戦し、おそらく現役時代の私と勝負すると科目によっては負けるんだろうな・・・と思うような成績を収めていることも、ちょっとショックですが面白い内容でした。AI技術は、処理速度の飛躍的な向上によって一見ものすごく進化しているように見えるものの、数学的なロジックは大きなことで、なるほどな・・・と少しため息が出る気もしました。

そう思うと、福祉の仕事は人が必要であり、介護や福祉に関する労働はずっと必要とされるんだろうけれど、労働力不足の今ではそれは喜んでばかりもいられない・・・。

 

そして、後半に書かれている、子どもの読解力は、確かに読んでいると「将来、だいじょうぶかな・・・」と思います。

いや、きっと、大人も含めて。

 

とりあえず、私が思ったのは、仕事の中で「書類を渡したからと言って読めるとはかぎらない。読んでもらっても理解できるとは限らない!」ということ。図解する、口頭で説明する、易しい言葉に言い換える、そもそも理解できるだけの前提知識があるかどうか考える・・・
何かを説明するときには、大切。大切だ!!

 

そして、かなりの大学の入試に入れるぐらいの力をロボットが身につけている昨今、ロボットができることができても仕方なく、今後ロボットにとってかわられずに生き残るには、AIにはできない部分をできるようになること・・・

って、書くと簡単ですが、それってすごく難しいですよね。

『人らしさ』を求められる仕事というのは、まだかなりの間AIにはとってかわられないのではないかと思います。

では、その『人らしさ』ってなんなのか?福祉の仕事は、きっとそうである面が多いと思うけれど、具体的には何なのか?

 

全く福祉の本ではないのですが、自分の仕事のやり方や意義を考えなければならないと思う1冊でした。

 

【DATA】
AI vs. 教科書が読めない子どもたち
新井 紀子 (著)
単行本: 287ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2018/2/2)
言語: 日本語
ISBN-10: 4492762396
ISBN-13: 978-4492762394
発売日: 2018/2/2