月別: 2020年3月

高齢者の転居支援(生活費試算は大切っていう話)

おはようございます。森のすず社会福祉士事務所です。
確定申告も終え、すっきりした朝。
新型コロナウィルスへの不安はありますが、生活は続いていきます。
おちついて、暮らしていきましょう。

この機会に、4月だし、高齢者にとっての新生活について考えてみましょう。

 

地域包括ケアの考え方でいくと、地域(自宅ではなく)で暮らし続ける支援体制は大切で、生活拠点となる住居としてはサ高住等も考慮。福祉職が転居場面を支援していることも…。そのとき、配慮必要ですよね?ね?

 

高齢になって、自宅での生活が難しくなる理由はいろいろあります。

・前みたいに歩けなくなった。段差のある家だと暮らしにくい。
・認知症が進み、誰かの見守りが必要になってきたけれど、自宅だと独居。
・お金の都合で、今の家に住み続けられない。

まぁ、いろいろあります。
いろいろありますが、何にしろ、誰にとっても住み慣れた場所を離れるのは、寂しいもの。
高齢になり、自宅を離れ、団体生活に移るとき、どんな風に思うのか…想像はできますが、想像を超えている感情があるとも想像できます。

 

とはいえ、転居することが必要となる場面はあるわけです。

つまり、新居を選ぶ場面、引っ越しをする場面があるわけです。

お金が有り余るほどあれば、何の問題もないかもしれません。
生活場面において、お金が物を言うことはとても多いです。
お金があれば、大抵の悩みごとは解決するのかもしれません。
でも実際は・・・

年金が月額換算7、8万円とか、生活保護を受給しているとか・・・そういう状況の方は多いでしょう。
そして、預貯金もさほどないか、まったくないということもよくあります。

100歳まで、いや、100歳を超えて生きる時代、先で困らないお金の予想は大切です。
何が起こるかわからないこの時代、生活費の予測も難しいものですが、出来る限りの予測は必要!

 

ところで、高齢者の転居を支援する際、配慮しなければならないのは、下記のような状態かと思います。

・計算力が低下し、お金の計算や予測ができにくい。
・重要な契約ごとがわかりにくく、転居した際のリスクやデメリットが予測できない。
・理解力が低下し、生活費や収支の話、契約ごとの話がわかりにくい。
・判断力が低下し、自分で考えて判断するということができにくい。

高齢者支援をする場合、認知症の診断をうけていると上記のどれかに当てはまる場合は多いです。
また、認知症の診断がない場合でも、高齢になると細かなことを考えたり、福祉のややこしい制度をくまなく調べ理解することは、難しいことも多いでしょう。

上記のような場合、「これを機会に、成年後見制度の利用を考えよう」という話になることもあります。
その場合、その利用を検討する対象となる人は、少なくとも、「補助・保佐・後見」のどれかに当てはまる可能性があり、大きな契約ごとには支援が必要という状態だと推測することは可能です。
成年後見制度は、審判が確定してから効力が発揮されますが、福祉の支援をする立場としては、本人が成年後見制度の利用の確定に至っていない状態でも、判断や理解には配慮が必要だという状況であるならば、それを配慮するべきだと思います。

私たちが転居をする際、家選びは何を注意して行うでしょうか?

・家賃と共益費の金額
・頭金
・立地条件
・築年数や設備

家を選ぶだけであれば、上記4つは絶対でしょう。
おそらく、事前に「おおむね家賃等で、〇万円前後まで!」というのは頭の中にあるはずです。
そしてその前提としては、「収入がこれくらいだから、ほかのいろいろ考えて、家賃に出せるのは〇万円」という考えがあるはずです。

つまり、私たちが転居する際、実際に考えていることは、家を選ぶという行動とともに、前提としてそれまでの生活経験や情報から、家賃を想定して選んでいるということになります。

 

しかし、高齢者のサ高住等への転居となると、私たちが転居するようにはいきません。
特に、それまで、賃貸や持ち家で暮らしていた人がサ高住等に行く場合、生活費の「家賃」以外の部分が大きく変わる可能性があります。

ということで、お金の試算は大切です。
必要そうな項目を挙げてみましょう。それぞれ、月にいくら必要でしょうか?

家賃
共益費
管理費
電気
ガス
水道
電話
携帯電話
食費
 朝
 昼
 夜
 おやつ
自費のヘルプサービス
医療費(内科、整形、心療、歯科、ほか)
薬代
その他医療費
OTC薬代
介護サービス自己負担分
デイサービス昼ご飯代
介護保険料
医療保険料
生命保険料
火災保険
お小遣い
散髪代
タクシー代
交通費
オムツ・パッド
下着買い替え
衣料品
その他衣類買い替え・買い足し
タオル
入れ歯洗浄剤
トイレ掃除洗剤
洗濯用洗剤
シャンプー
せっけん
ティッシュ
トイレットペーパー
などなど・・・他なにかな??

おそらく、これだけ挙げても、後になって「あ、これ考えてなかった」という出費はあるもの。

もしも、生活保護受給者や、その金額に近い年金のみの方の、サ高住等への転居の場合は、しっかりご本人とお金のやりくりの見通しを考えて、説明して、何を我慢するのか、何を大事にするのかを確認することが大切だと思います。

転居してしまってから、「お金がない!だから、散髪はダメ。コーヒーもダメ。お小遣いも渡せない。」となると、困るのは高齢者本人。
人生の最終段階を考えることの重要性は、ACPとして医療現場では取り入れられつつありますが、それは普段の高齢者支援の中でも考慮されるべきことだと思います。
思ってもみなかった辛い生活になると、何のために生きてきたのか・・・と思うことになってしまいます。

 

よくあるのは「本人が、それでいいと言いました」という話。
では、その「それでいい」と言う過程において、きちんと説明できていたのかどうか。
本当に納得した「それでいい」であって、判断力や記憶力が確かであれば、「こんなはずじゃなかった」「こんなの嫌だ」「聞いてない!」とはならないと思いますが・・・、「本人が、それでいいと言いました」という説明をする必要があるのであれば、その場面ではすでに思っていることとは反した良くない状況になっていたり、予見されることですよね。

きちんと説明する、とはどういうことなのか。
判断をする際に行う支援とは、どうあるべきなのか。

自立や自己決定を支援するということは、本人に責任を被せることではないはずです。
何にしても、福祉の場面において、最終的に不利益を被ってしまうのは、ご本人ですから、私たち福祉の支援を行うものは、『転ばぬ先の杖』として、利用者さんが将来転んでしまわないように、配慮のある支援を心掛けなければなりません。

 

転ばぬ先の杖、英語だとLook before you leap.だそうです。「飛ぶ前に見ろ!」ですね。
実行する前に、確認しなさい!! 当たり前です。
お風呂のお湯を被る前に、指先で温度を確認しなさい。
シャワーを人にかける前に、自分の手で温度を確認しなさい。
鍋に大量に入れる前に、本当に砂糖か確認しなさい。
当たり前です。
転居する前に、見ろ! 生活費を、見ろ! 事細かく、見ろ!!
ってことですね。

 

全ては予測しきれませんし、計算しつくせませんが、やるのとやらないのとだと大違いです。

そして、支援をする際は、できるだけ大きな文字で、書きだして、
繰り返して、分かりやすい言葉で、ゆっくりと、説明しましょう。
何度か、説明しましょう。
説明した日は、資料にメモをしておきましょう。

 

4月だからという区切りで、サ高住に移り住む人はそういないかもしれません。
必要に応じたタイミングで、生活は変化していきます。
もし、転居の支援が必要になったら、支援者の都合だけで押し込むのではなく、しっかりとご本人が納得して、新しい生活始まりをサポートしていけたら、いいですね。