本の紹介『災害・支援・ケアの社会学――地域保健とジェンダーの視点から』
【読書の記録6】
特に後半部分のいくらかは保健師の専門性について書いてある本ですが、それも含めて私にとっては新鮮な感覚で「ほほぉ、、、そうなんや」とおもって読める本。
流し読みで内容を確認したので、ここ!という箇所はもう一度読み直したいと思う。
前のほう1/3はよくある、「社会学と災害や防災の研究の関係」がまとめてあって、それはここのところ、いろんな人のまとめ方を読んでいるので、いつも見る名前や本の引用や参照があったり、この本で初めて知った研究者や論文があったりで、それはそれで、「へー、そうなんか」と思った。
ただ、普通は、そういう読み方はしないと思うので、今後もし、災害と社会学関連の論文を書く方には、この本の前半もいい感じにまとめてありますよ、ということでいいのだけれど。
中ほどの部分。特にこの本ではタイトルには「ジェンダーの視点」とあるが、内容では「女性視点」が具体的に取り上げられている。
また、発災したとき、そしてその後、女性の方が男性よりも死亡が多いという調査結果が示されていて、女性は男性と比べると災害時に脆弱だといえるという。
さらに、子どもの面倒をみていたり、介護をしていたりする人は、まだまだ女性の方が多い。実際、育児休業については「男性がどんどん取りましょう!」というのを言う必要があるぐらいに、男性の取得がまだまだ少なく、女性が子育ての主を担っているのが現状なのだと思う。
ということは、ケアをする人として「女性」がいるわけで、日ごろからそれを担っているのであれば、災害発生時にはケアをする対象者の安全を守ろうとすることから、逃げにくくなるわけで、いくら元気で健康でてきぱきできる人でも、脆弱な状況に立たされていると言える。
たしかに、そうだとおもう。
この本では、個別避難計画についても取り上げられていて、それが、高齢者と障害者が主な対象になっていることを指摘しているし、避難行動への支援が主で、避難生活の部分が薄いということも指摘していて、その通りだと思う。
もちろん、避難行動に主眼を置くのは「まずは、その場を生き延びねばならぬ!」ということを考えると、まずそれが大前提ではあるとはおもうけれども。
そして、確かにこの本が言うように、日ごろ家庭でケアをする立場の人が、ケアされる側の人とニコイチ状態になっていることで、身動きが取れにくくなって、被災しやすいであろうという点は、私は考えていなかったし、むしろ、そのケアされる側だけをみて「家にケアしてくれる人が常時いるなら、逃げられるからよかったね」ぐらいに思っていた。めちゃくちゃ反省すべき点である。
そういえば私は、ジェンダーについて、何も知らない。
きちんと学ばないといけないとつくづく思う。
この本の帯には「曖昧なニーズ」の典型として書かれているのだけれど、そもそも、『高齢者』にしてもいろんな人がいるし、『障害者』と3文字で言っても、実際のところいろんな人がいるし、ある状況で困る困らないは、人それぞれだとは思う。
誰が実際に困る状況に陥るかは、個別にみるとそれぞれなんだけれど、ざっくり集合的な言葉で言うと、それが、高齢者であったり障害者であったり、ということで、当然、それが身体能力の男女別でいうと女性の方が被害から逃れにくそうだし、介護や世話をしている点で男女別で捉えると女性の方が介護に従事している数から発災時に困る人が多そうだし。
発災時に逃げにくい、代表的な集団としては、高齢者と障害者と言えるのかもしれないけれど、それは、それ、現場的には現場で個別個人に沿って考えねばならないよねぇ。
起こってみないとわからないことも多く、起こってから気づくことも多いと思うんだけれど、少なくとも、この本を読む限り、ケアをしている人も、いざという時に支援が必要な対象になり得るということで、今のうちから、「こんなときどうする」を考えておかなければならない対象だということ。
そして、あいまいなニーズを秘めた人は、ほかにもいるはず。
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災害・支援・ケアの社会学――地域保健とジェンダーの視点から
板倉有紀 (著)
出版社 : 生活書院 (2018/11/16)
発売日 : 2018/11/16
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 288ページ
ISBN-10 : 4865000879
ISBN-13 : 978-4865000870