読書

読書6:「対人援助職のための家族理解入門」

今年は読書&記録をやっていきたいと思います。森のすず社会福祉士事務所 森保です♪
2019年の感想文6冊目は→ 「対人援助職のための家族理解入門 家族の構造理論を活かす」 団 士郎 (著)

『家族』って、何なのでしょうね。人間は成熟するまでの時間が長く、その間にさまざまなことを身につける必要があります。生まれてからかなりの時間、その「教育」を担うのは家庭です。家庭の中で、家族によって教えられることは、特に決まったマニュアルもなく、常識として捉えられていることが中心だと思いますが、よくよく考えてみると、それはとても曖昧なこと。ある程度大きくなって、友達と一緒に過ごしたり、学校などで他の人と一緒に何かをするようになって初めて、『うちって、かわってる??』と気づくこともありますが、すべてにおいて子が自ら気づき、ときにそれを自力で修正できるというものでもありません。それは、例えば家庭内の虐待が発生する場面において、子が「自分が悪いから」と思いこまされているようなこともあり、自分の行いが客観的に見て本当に罰せられるほどのことなのか(だとしても、虐待は良くないのですが)、他の家庭では問題にならない行動なのか、子にとって知る術もそれを判断する能力も基準もないかもしれません。『家族』は人間が生まれて、すぐに属する、最も小さな社会の単位です。そして、どこの家族に属するかを自ら決めることはできず、どういう方針で育てられるかなどにも、子自らが意見を述べる機会はありません。さらに、『家族』の活動の多くは、「家庭」という密室の中で行われるものです。教育方針、経済、親の事情、などなど、外から口出しすることが難しいと思える場面を多く持つ場です。『正しい家庭の運営マニュアル』など共通化されることはなく、特に必須で習うこともなく、家族は代々受け継がれ、ときにその中で大きな課題を抱えます。一体、『家族』って、なんなんだろう?

 

私が、『家族』について考え始めたのは、もうずいぶん前です。

今、この本を手に取ったのは、書店でなんとなく見ていた棚で、気になるタイトルだったので、それだけで買ったのですが、読んでみるとなるほどな、と思えることと、きちんと家族の課題について系統立ててまとめてあることから、興味関心を維持して読むことができました。

 

内容は、ジェノグラムを描くことの大切さと、ジェノグラムをクライアントの面前で描きながら進める面談の方法、家族システムのこと、家族の中の境界のこと、サブシステムのこと、パワーのこと、構造的特徴に基づく展開、事例について、です。

「入門」書なので、広く分かり易い言葉で書いてあると思います。一応専門書の部類かとおもいますが(対人援助職のための、だし・・・)、一般書として読んでも、分かり易く役立つ気はします。

 

私が、この本の中で「今後とりいれよう!」とおもったのは、ジェノグラムを描く面接技法です。これまでも、必要に応じてちょこちょこっと描いていましたが、大きく、それを確認してもらいながら関係性を解き明かすような使い方はしていなかったので、これはいいアイデアだなぁとおもったわけです。
私たち相談援助職は、対象となる人にはジェノグラムで二重丸や二重四角を描き、その人にターゲットをあててサポートを行うことが多いですが、でも、家族の中で暮らしたり、離れていても家族の影響があるのなら、そのバランスをみることは大切なことですね。
特に子どもを取り巻く環境は、一見、友達とのいざこざという課題を抱えているようにみえても、やはりその背景にある家族の状態というのは、影響があり易いものだと思います。

必要に応じて、適切にジェノグラムを描けるように、日ごろから心掛けたいと思います。あと、エコマップも。

 

そして、もうひとつ。「境界」という考え方。
家族は、本来、密室的な部分があって、それが悪い影響になることもありますが、もちろん、壁がしっかりして外部の侵入がないからこそ、安心できる場にもなっています。「境界」をつくる壁は、見えないけれど、あるべきものです。

ところが、その「境界」がうまく作られていないと、外部からやすやすと侵入されてしまい、かき乱されてしまったり(周囲の人は、それを良かれと思ってしている場合も・・・)、本来境界ではないところに境界ができてしまうと、家族内の結びつきのバランスがおかしくなってしまったり・・・。

この、「境界」という考え方を取り入れると、理想的な家族のあるべき姿と、そうではない現在の姿において、境界はどのように違うのか、を考えることができます。
これは、家族の状態を理解するのに、分かり易い方法。

本文では、ご近所さんが入り込んでしまっている家族の例が紹介され、検討されていました。

 

いろいろ、ありますよね、家族って。

これが、正しい家族!っていうのは、もはや今の時代にはないように思いますが、基本的には、家族メンバーが気持ちよく過ごし、子どもや大きくなったら巣立ち、自分のことは自分でして、ときに親世代のことも気にかけ・・・という循環ができればいいのかなぁとおもいます。

戦前戦後の大家族時代とは、経済状況も、社会の常識や物事の考え方も、教育の在り方も、価値観もなんにもかも違う状態なのですが、それでも、人間は長い間家族にものごとを教えられ、やがて巣立っていかねばならない時が来る、というのは変わらないものです。

社会福祉士として課題に直面した人に出会う時、その課題を、その人だけのものととらえるのか、家族システムを考慮できるのか、はたまたもっと大きな視点や違う角度から見れるスキルをもっているのかは、そのクライアントへのサポートの質や量や方法に影響します。

ベストな方法の支援をしたい、そのためには、やはり、社会の基礎をなす家族について知ることは大切だと思います。

 

  • 単行本: 134ページ
  • 出版社: 中央法規出版 (2013/7/1)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 4805838604
  • ISBN-13: 978-4805838600
  • 発売日: 2013/7/1