本の紹介『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ(1から4) 』
【読書の記録12】
ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ(1から4) (マンガワンコミックス) 魚豊
『チ。』の作者の作品。
ただし私は、『チ。』はネットで冒頭の数分を見ただけなので、中身は今のところ知らないが、これを読んだので、次は『チ。』もう見るかと興味は湧いている。
これは、世界には陰謀があると、いわゆる陰謀論を信じてしまう主人公の話。
ただ、一生懸命生きてきた人が、働いても豊かになれず、自分の人生が始まっていないと感じているような状況で、ちょっとしたアクシデントから、人との出会いがあって、なんだかんだあって陰謀論を信じるような方向になってしまう。
陰謀論と言う言葉も、よく考えれば、陰謀を信じていない側の言葉であり、それを存在するものだと信じている人たちにしてみると、いわゆる陰謀の話は陰謀では無いのであり、その世界は折り合わない。
物語の中でも、論理的な思考が一見できているような話ではあるが、主人公の考え方はどこかが飛躍しており、どこかが結果ありきで、自分の論理に好都合な情報は捉え、そうではないものはスルーしてしまうような感じ。
人間には確証バイアスと言う認知の偏りがあるが、この物語の主人公のように、何かの考えにとらわれて、それを信じる方向でしか物事を考えれないようになってしまうのは、なかなか自分では方向を修正することができず、物事によっては怖いことになるだろう。
この世の中には報道されていないことがあるのです。
それは報道できないのです。
なぜなら大きな力があるからです。
これに気づく人は少ないです。
その大きな力は裕福な人だけをより有利にしようとします。
学歴、経済力や、権力のある人のための世の中にしようとします。
その大きな力は、そうでない人たちをないがしろにしようとします。
あなたも気づかなければ、陥れられます。
世の中はその大きな力によっていつの間にか支配されています。
ほとんどの人は気づいていません。
知らない間に、支配されているからです。
だけど、あなたは気づきました。
他の人にこの話をしても、大抵の人が否定をするでしょう。
当然にその大きな力の恩恵に預かっている人も否定をするでしょう。
否定をすることこそ、その大きな力が存在する証拠です。
あなたは気づいたのですから、その否定される場面にあっても、その否定こそが、その背景に大きな力があると言うことを証明していると言うことがわかるでしょう。
みたいな…。
そういえば、ずいぶん昔に、宗教に関するマインドコントロールを調べていたときに、スティーブン・ハッサンの『マインドコントロールの恐怖』に書いてあったと思うけど、例えば「あなたはこれから周りの人に否定される。なぜならそれは、悪魔がそうしているからです。悪魔がいる証拠です。それに騙されてはいけません。」みたいな感じで、いわゆるマイドコントロールを仕掛けてくる団体がいかに正しい存在かを周りに伝えようとすると、周りから反対をされることをあらかじめ伝えておき、それがなぜ反対されるのかについて、先に理由を説明して解釈を与えておくと言う方法が取られると読んだ。
なかなか難しい。
何が正しいかを判断するのは難しい。
自分がそうだと思っていることが、本当に正しいのか、具体的な証拠を調べるにも、個人としては限界があることが多い。
時々、いろんな陰謀論が出てくる。
恐怖心や、不安感や、不満感は、この世の中への信頼を薄れさせなくすことにつながり、だんだんと自分の命や人生や人権や大切なものが狙われ奪われていくように思うかもしれない。
ないものを証明する事は難しい。
それが、あることの証明になっていないことを伝えるのも難しいかもしれない。
私から見ると、『それって飛躍してるよね。今の説明、ここからここに飛んだよね。この部分が説明できてないよね。』と思うことがある場合、私はそれを信用しないのだが、とは言え、では私の中で理屈がスッキリと通っていると思っているものが、他のもっとスマートな人から見てもそうだとは限らない。
話はそれるが、例えば某情報通信関連企業やその企業を有する国が、地球上の通信機器を使う人の個人情報を全て監視してコントロールしようとしていると言う話になった場合、見られたらこっぱずかしいな…と思う事はいろいろあるのだが、だからといってその陰謀に巻き込まれないために通信機器を使わないと言う選択肢は選ばない。
なぜそれを選ばないかを考えると、自分の存在を振り返ったときに、地球規模で考えると取るに足らないとわかっているからで、私の通信を傍受したところで、誰にも何のプラスにもならないマイナスにもならない、暇つぶしにもならないと思うからである。
あなたのその一挙一動を見られているよとか言われると、気持ち悪いと思うが、そもそも見ないだろう。
普段わざわざそれを考えて、いろんなものを使うか使わないかを考えていなくて、ある程度信用できると直感的に思うものは直感的に使っている状況だが、改めて使うべきかどうかを考えると、そんな感じの考え方になる。
この考え方にも飛躍している部分はあるかもしれないが、根本的に、社会は、私個人に対して特段に興味、関心を持っているわけではなく、人間は、それぞれ自分自身のことに対して、そしてその人本人に関係することに対して忙しく、地球規模になるとなおさらであり、私はそんな社会や世界をそんなふうに考え、ある意味、信頼していると言う状況である。
出版社: 小学館
ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ(1から4) (マンガワンコミックス) 魚豊