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介護丼と、ご飯におかずを乗せること。

「介護丼」なる言葉があるという。

介護職員が食事介護のときに、ご飯のうえにおかずを乗せて、混ぜて食べさせるという…それが介護丼。
問題はたぶん、許容できる範囲をはるかに超えたおかずを混ぜ込み、利用者さんの意思も関係なく職員側の都合でやっているあたり。

ご飯を食べに行き、定食を頼んだとして、お店の人が本来は分けて盛り付ける、ごはん、みそ汁、サバの味噌煮、なます、里芋の煮物、たくあんを、丼に全部入れて、ついでに混ぜて出してくれたら、たいていの人は拒否すると思う。
そんな恐ろしい丼が、提供されていることがあるとか、ないとか。

虐待防止の研修などで、「ご飯の上におかずを混ぜて食べさせるのはよくない」というような話は、時々聞く。
それが拡大解釈されて、「利用者さんが乗せてくれというのも、それはよくないので、うちは断っている。」と聞いたりする。
前述の、定食をすべて混ぜ込んだ恐ろしい食べ物(もはや、食べ物かどうかすらわからない・・・)は、不適切だと思うが、果たして、単純にご飯の上にものを乗せるのが悪い、というわけではないだろう。
白いご飯だけを食べるのが苦手、という人もいるだろうし、ましてや味のない軟飯やおかゆなら、なおさら飲み込みにくい場合もあるだろうし、容易にふりかけや佃煮を勝手に持ち込むことができにくい環境ならなおさら、何かを工夫しなければ食べにくい場合もあるかもしれない。
しかし、それが誰の視点で、誰の要望で、誰を満足させるために行われているかは、大事な点だと思う。

もうネーミングからして美味しそうには聞こえない介護丼に思えてきたし、実際、その言葉が表すことは、介護丼をするような食事介助は、介護者側の「早く終わらせたい」というところが含まれていて、介護側の利便性を優先させていることを意味しているのだとは思う。

しかし、介護ということは本来、さっさと済ませたり、餌を与えるようなものではなく、人が尊厳をもって生きることを支えるものであるし、その中で食事は生命の維持だけのためではなく、楽しみや喜びを感じる場面でもあり、介護のなかではそれらを実現することも、人としての尊厳を大切にすることの一環ではないかと思う。

かくいう私は、白ご飯だけでも食べられるが、味のついたご飯や、ご飯に何かが乗っているものが好きなので、お行儀に目をつむってよいのであれば、ご飯の上におかずを乗せたい!と思う派であるし、塩鮭があればお茶漬けにしたい!
自力で食べられる間は、自分で載せて食べたらよいのだろうが、食事を介助される時は、喋られるなら「そのおかずを、ご飯の上にのせて」というかもしれない。その時に、一律に、「不適切だからダメ」と言われてしまうと、悲しい。
乗せると味が合わないようなものを言っていたら、試しにちょっとだけ食べさせて様子を見てほしいし、乗せても大丈夫そうなものならリクエストにこたえてほしい。
と、思っていたりする。

乗せる、乗せない、何から食べる、何を残したい、というのは、本人の要望にできるだけ沿ってほしいなぁ、と私は思う。