今年は読書&記録をやっていきたいと思います。森のすず社会福祉士事務所 森保です♪
2019年の感想文13冊目は→ 『やめられない ギャンブル地獄からの生還』(帚木蓬生 著)
日本にずっと住んでいると、日本しか知らないので、日本の状態が当たり前だと思って生きている。
当たり前に見て育っているのは、パチンコ・パチスロ店。
この本を買った経緯は、今公開されている映画『閉鎖病棟』の原作を探しに書店へ行き、並んでいたのを見つけて。
パラパラとページをめくると事例も多く、診断や治療について書いてあるので興味を引いた。
購入したほぼ同時期、有名人の薬物での逮捕のニュースもあった。
ギャンブル依存、薬物依存、アルコール依存。
これらの問題は、福祉の中で、家族全体や成人を支援しようとするとき、必ず出て来る問題。
更生支援としてかかわろうとすると、何らかの依存がある場合も多い。
『ギャンブル地獄からの生還』と表紙に書いてあることは「やめられない」と大きく書いてあることと相反しているようで、表紙には希望がある気がして、手に取った。
第1章の事例は、生々しい。
一人称で述べられる事例は、性別や年齢や環境は違っても、結末はもちろん、たどる過程も結局は似通っている。
第2章以降で述べられることは、診断や、ギャンブル依存に関するいろいろ、治療、そして自助グループのこと。
この本を読んで大切なことは2点。
まず、ギャンブル依存は、そうなった場合、自然治癒や自力治癒はしない。それどころか、どんどん進行する。精神論では治せない。甘ったれた根性だから、とか、根性叩き直すとか、そういう問題ではもはやない。
そして、ギャンブル依存の場合、借金や場合によっては横領などお金の問題を抱えるが、それを家族らが代わって払うことが、より一層状況を深刻化すること。
この2点は、よく覚えて置き、もしも身近にギャンブル依存になっている人がいるのなら
治療に向かわせるよう支援する、支援につなげる
お金を肩代わりしないで、治療しながら自分で対応させる
を、徹底すること。
本文で述べられていて、確かにそうだと思うのは、例えばアルコール依存や薬物依存であれば、たしかに薬物なんかは法律に触れているし、とても大ごとで、警察も介入しとんでもないことになり、多くの人に迷惑がかかる。アルコールも、人がかわってしまいDVにつながったりすることがあるのは、周囲の人が傷つく原因になり、大迷惑だ。でも、著者あギャンブル依存が最も周囲を苦しめる、という。
それはつまり、経済的な部分で、底なしになっていくこと。借金をすること、人をだましてお金を得ることに罪悪感がなくなり、肩代わりしてもらえたとなると、反省は数日ももたず、また、ギャンブルのために借金を膨らませ、それを償おうとする家族は身を粉にして働き、かかわる家族の生きる自由や喜びも奪ってしまうことになり、人生そのものを犠牲にさせてしまうことにある
たしかに、そうかも。
私も時々スロットをした経験はあるが、はまろうと思えば、はまりこめる要素はすごく強いと思う。
絶妙に、喜びや充実感、満足感が得られる演出や仕組みが組み込まれているわけで、むしゃくしゃしたときに、一時的になんとなくスッキリした幻想を抱かせる部分は、スロットマシーンを設計する側に、人間の認知機能や心理的な部分を知り尽くしている人や研究体制がついているんだろうなぁと思う。
一方で、当たり前のことだが、客側は店に対して絶対に勝ち越せない。
新しいマシーンに入れ替え、従業員を雇い、店の運営をしようと思うと、それなりな経費がかかる。
大学生のとき、統計学の授業かなにかの授業で先生が、パチンコ店の客が勝って帰る率の話をされていたことがある。
詳しいことは忘れたし、統計学は嫌いだったけれど、『統計で考えて、客がその日勝って帰るのは、〇人に1人。あとの人は全部負け。悔しそうな顔をしている人もいるかもしれないけれど、大抵の人はなんでもない顔をしている。でも、負けている。負けている方が圧倒的に多い。毎日行くとどうなるか。負けが増えていきますね』みたいな話が印象的で、『勝てない、負ける』が強く印象に残っている。
それは、卒業後20年以上たっても、しっかり覚えている言葉。
でも、一方で、その「たまに、勝つ。〇人に1人は勝つ」を、自分がその運を持っているとおもったり、やってみないとわからないと思い込んで、やろうとしてしまう人間心理があるのも、わかる。
更に余談であるが、大学院時代、当時付き合っていた人の影響もあり、パチスロに若干はまりそうになった。
本書でも述べられているが、女性がパチスロやパチンコを始めるのは、手ほどきしてくれる男性の影響が大きい。
たしかに、少ない元手が大きなお金に化けたときは、嬉しい。
でも、やはりトータルで考えると、負けている。
パチスロが好きな人は、当時の相手もそうだったが、「この台の設定はいい」などという。
たしかに、設定によっては出やすさ、出にくさもあるのかもしれないけれど・・・・
興味と不信感があった私は、当時、ゲーム機でパチスロのシミュレーションソフトが出ていたのを購入し、最高設定にしてオートプレイで一晩放置することを何日かやってみた。
翌朝、ゲームの様子を見てみると、ほぼ大きく負けていた。
統計学かなにかの先生の授業中の言葉は、間違っていないようだ・・・と思ったという思い出。
話がそれた。
この本を読んで、よかったな、と思うのは、自助グループがどういうものかわかったこと。
GAと呼ばれるグループがあり、そこに通うことで、依存状態から抜け出せるという話。
なんにしろ依存を薬で治すことは、なかなか難しい。
ひとの繋がり、自分が否定されない居場所でのつながりが大切。
そして何よりまずは、ギャンブル依存というものがどういうものなのか、知っておくことが大切。
- タイトル:やめられない ギャンブル地獄からの生還
- 著者:帚木蓬生
- 文庫: 304ページ
- 出版社: 集英社 (2019/8/21)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4087440117
- ISBN-13: 978-4087440119
- 発売日: 2019/8/21